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IT パスポート試験

テクノロジ系(IT技術)ー大分類8:コンピュータシステムー

    1. 8-15 中分類15:コンピュータ構成要素
      1. 8-15-40 プロセッサ
      2. 8-15-41 メモリ
      3. 8-15-42 入出力デバイス
    2. 8-16 中分類16:システム構成要素
      1. 8-16-43 システムの構成
      2. 8-16-44 システムの評価指標
    3. 8-17 中分類17:ソフトウェア
      1. 8-17-45 オペレーティングシステム
      2. 8-17-46 ファイルシステム
      3. 8-17-47 開発ツール
      4. 8-17-48 オープンソースソフトウェア
    4. 8-18 中分類18:ハードウェア
      1. 8-18-49 ハードウェア(コンピュータ・入出力装置)

8-15 中分類15:コンピュータ構成要素

8-15-40 プロセッサ

上図に示すように,コンピュータは,大きく分けると,制御装置,演算装置,記憶装置,入力装置,及び,出力装置の 5 つの装置から構成されており,これをコンピュータの 5 大装置という.各装置の役割は,以下に示すとおりである.

装置 機能
中央処理装置CPU:Central Processing Unit制御装置 プログラムから命令を取り出し,解釈し,実行するという過程を通し,コンピュータ全体を制御する.これらの動作は,内部に持つ一定周期の信号に合わせて行われ,その信号の周波数をクロック周波数という.一般に,クロック周波数が大きいほど,コンピュータの動作は高速になる.たとえば,2 GHz (単位に関しては,情報に関する理論参照)のプロセッサにおいて,1 クロック当たりの時間は,
   1秒 ÷ 2 × 109 = 0.5 × 10-9 = 0.5 ナノ秒
となる.従って,5 クロックかかる命令は 2.5 ナノ秒で実行できることになる.
演算装置 四則演算,比較などを行う
記憶装置 主記憶装置メインメモリプログラムやデータを主として一時的に保存するための装置であり,一般に,RAM や ROM などの半導体メモリが使用される.
補助記憶装置 プログラムやデータを長期的に保存するための装置であり,ハードディスク,CD,DVD などがあげられる.
入力装置 プログラムやデータを外部から入力するための装置であり,キーボード,マウスなどがあげられる.
出力装置 プログラムやデータを外部へ出力するための装置であり,ディスプレイ,プリンタなどがあげられる.

8-15-41 メモリ

  記憶装置(メモリ)は,大きく分けて,半導体を使用した記憶装置(半導体メモリ)と,磁気や光を利用した記憶装置に分類できる.そして,主記憶装置には半導体メモリが,また,補助記憶装置には,一部の半導体メモリと磁気や光を利用した記憶装置が使用される.これは,メモリの容量,価格,読み書きするための速度(アクセス速度)の違いなどによって生じた結果である.なお,以下に示すメモリの他,CPU 内にあり,演算処理の際にデータの格納場所として使われるメモリ(レジスタ)が存在する.レジスタは,コンピュータ内で最も高速なメモリが使用されている.

  主記憶装置内の半導体メモリも,その目的の違いにより,数種類の半導体メモリが使用されている.電源を切っても記憶内容が消えてはならない部分には ROM が,また,消えても良い部分には RAM が使用される.さらに,RAM に対しても数種類使用されている.コンピュータの動作が高速になると,メモリに対するアクセス速度も当然速くなければならない.しかし,すべてのメインメモリを高速な RAM で構成すれば,価格が高くなる.そこで,メインメモリの一部だけに高速な RAM を使用し,差し当たって必要なプログラムの一部やデータをそこに記憶することによって,アクセス速度を速くする方法が使用されている.このようにして使用される高速 RAM をキャッシュメモリと呼ぶ.キャッシュメモリは,アクセスの順に,一次キャッシュ,二次キャッシュなどのように,さらに細分化されている場合もある.

  一般に,主記憶の大部分は RAM によって構成されているため,電源を切るとその記憶内容は消えてしまうことになる.そこで,電源を切る直前の作業状態をハードディスクに保存するハイバネーション休止状態)という機能がしばしば利用される.ハイバネーションを利用することによって,再起動の際,電源を切る直前の状態から作業を開始できるため,アプリケーションの起動や終了の手続きを省略でき,消費電力の低減にも繋がる.似たような省電力機能として,作業状態を主記憶に保存したままモニタやハードディスクなどの電源を自動的に切るサスペンド機能があるが,サスペンド機能においては,主記憶リフレッシュのための電力は消費される.

  また,ハードディスクなどの外部記憶装置に対するアクセス速度は,メインメモリとのアクセス速度に比較して非常に遅く,この差を補うために,メインメモリよりは遅いが,外部記憶装置に対するアクセス速度よりも早い RAM を使用することがある.これを,ディスクキャッシュと呼ぶ.

  1. 半導体メモリ

    分類 全体の特徴 種類 特徴
    RAM( Random Access Memory ) 揮発性(電源を切ると記憶内容も消える) SRAM( Static Ram ) リフレッシュ(一定時間ごとの書き込み)が不要であり,容量は小さい.バイポーラ型と MOS 型があるが,バイポーラ型は高速でありキャッシュメモリに,MOS 型は中速であり一般のメインメモリに使用される.
    DRAM( Dynamic Ram ) リフレッシュが必要であり,容量は大きい.MOS 型,かつ,低速であり,一般のメインメモリに使用される.
    ROM( Read Only Memory ) 不揮発性(電源を切っても記憶内容は消えない) マスク ROM 工場出荷時に,プログラムやデータが書き込まれており,書き換えは不可能である.ゲームカセットなどに使用される.
    プログラマブル ROM PROM( Programmable ROM ) PROM ライタによって 1 度だけ書き込み可能である.メインメモリの一部などに使用される.
    EPROM( Erasable Programmable ROM ) PROM の一種であり,紫外線でデータを消去することによって,何回でも書き込み可能である.メインメモリの一部などに使用される.
    EEPROM( Electrically Erasable Programmable ROM ) EPROM の一種であり,電圧によってバイト単位でデータを消去でき,何回でも書き込み可能である.IC カードなどに使用される.
    フラッシュメモリ EEPROM の一種であり,電圧によってブロック単位でデータを消去でき,何回でも書き込み可能である.補助記憶装置として,ディジタルカメラや携帯電話のデータを保存するためのメモリカードコンパクトフラッシュカードCF カード),SD カードなど),パソコン等における USB メモリなどに使用される.また,フラッシュメモリを用いた SSD( Solid State Drive )は,ハードディスクの代わりとして期待されている記憶装置であるが,書込み回数の上限などの問題がある..

  2. その他の記憶装置(基本的に,補助記憶装置として利用)

    記憶方法 種類 特徴
    磁気を使って読み書き 磁気テープ アクセス速度は遅いが,大容量であるため,バックアップ等に利用される.
    DAT 磁気テープと同様の装置であるが,情報をディジタル化している.
    ハードディスク磁気ディスク大容量,かつ,アクセス速度が速く,コンピュータの代表的な補助記憶装置である.一般に,コンピュータ内に装着してある.ディスクに塗布した磁性体の磁化の方向を,磁気ヘッドによって変化させて記録する.
    フロッピーディスク 小容量,かつ,アクセス速度が遅いため,代わりに USB メモリを使用することが多く,最近はほとんど使用されない.
    レーザ光で磁性体に書き込み,レーザ光で読む MO 記憶容量,アクセス速度の面から,CD,DVD,USB メモリなどが代わりに使用され,最近ではほとんど使用されない.磁化されているディスクの記録膜にレーザ光を当てて熱し,磁気ヘッドで磁化の方向を変化させて記録する.
    レーザ光を使って読み書き CD-ROM 読み込み専用.記憶容量:650 MB,700 MB
    CD-R 1 度だけ書き込み可能.有機色素が塗られたディスクにレーザ光を当て有機色素の層にピットと呼ばれる焦げ跡を作って記録する.記憶容量:650 MB,700 MB
    CD-RW 何度でも書き込み可能.記憶容量:650 MB,700 MB
    DVD-ROM 読み込み専用.記憶容量:4.7 GB(片面 1 層),8.5 GB(片面 2 層)(いずれも,両面の場合は,片面の 2 倍)
    DVD-R 1 度だけ書き込み可能.ディスクをはり合わせた 2 層構造をもち,レーザ光で記録層を相変化させて記録する.記憶容量:4.7 GB(片面)
    DVD-RW 何度でも書き込み可能.記憶容量:4.7 GB(片面)
    DVD-RAM 何度でも書き込み可能.記憶容量:2.6 GB(片面 1 層),4.7 GB(片面 2 層)(いずれも,両面の場合は,片面の 2 倍)

  3. 仮想記憶

    基本的に,プログラムはメインメモリ内にないと実行できない.しかし,場合によっては,メインメモリに入りきらないプログラムを実行したい場合がある.そのような場合,ハードディスクの一部をメインメモリとみなし,メインメモリの容量を見かけ上増加させ,そのプログラムを実行する技術が仮想記憶である.

    一般に,実行しているプログラムは,プログラム全体の一部である.従って,実行に必要な部分だけがメインメモリにあれば実行できることになる.そこで,実行に必要でない部分をハードディスクに退避(スワップアウト)させ,実行に必要になったときメインメモリに持ってくる(スワップイン)ようにすれば,メインメモリより大きなプログラムも実行可能になる.これが,仮想記憶の基本的な考え方である.

    このように,メインメモリとハードディスクの間で記憶内容を出し入れすることをスワッピングという.スワッピングは,固定したサイズ(ページ),または,処理する単位(セグメント.大きさはまちまち)で実行される.一般に,ハードディスクのアクセス時間はメインメモリに対するアクセス時間に比較して非常に遅いため,スワッピング回数が増加すると実行時間が非常に長くなる.これを防ぐためには,メインメモリそのものを増加させる必要がある.

  4. ハードディスクの記憶方法

    ハードディスクは,磁性体を塗布した複数枚の円盤(ディスク)から構成され,それらが高速に回転している.データを管理する最小単位をセクタ,同心円状にあるセクタの集まりをトラック,また,同じ位置にあるトラックの集まりをシリンダと呼ぶ.従って,ディスクの記憶容量は以下のようになる.

    (セクタ当たりのバイト数)×(トラック当たりのセクタ数)×(記録面当たりのトラック数)×(記録面数)

    一般に,OS は,複数のセクタを集めたクラスタ単位ブロック単位)でデータを管理する.例えば,1 セクタが 512 バイト,1 クラスタが 4 セクタで構成されている場合,2500 バイトのデータを記録するには 5 セクタ必要であるが,クラスタ単位で管理するため,2 クラスタが必要になる.そのため,3 セクタは空いているのに使用されないことになる.このように,ディスク容量のすべてを使用可能であるとは限らない点に注意する必要がある.

    また,ファイルやデータの追加や削除を繰り返すと,同じファイルが連続するクラスタに保存されず,断片化されて保存されるようなことが起こる.これを,フラグメンテーションと呼ぶ.一般に,フラグメンテーションが発生すると,アクセス時間が長くなる.従って,断片化されたファイルを連続した領域に移す作業,デフラグメンテーションを適宜行う必要がある.なお,ディスクに対するアクセス時間は,次式によって決まる.

    アクセス時間 = シーク時間 + サーチ時間 + データ転送時間

    シーク時間位置決め時間): 磁気ヘッドを求めるデータがあるトラックまで移動する時間
    サーチ時間回転待ち時間): ディスクが回転して,磁気ヘッドが求めるデータの位置に来るまでの時間
    データ転送時間: データを読み取る時間

  5. RAID: ディスクアレイは,複数の磁気ディスクを並列に並べ,プログラムやデータを分割して保存したり,又は,同じ内容を複数のディスクに保存したりすることによって,システムの高速性,信頼性を向上させるためのものである.RID は,ディスクアレイの一種であり,以下に示すような種類がある.

    種類 特徴
    RAID0 データを複数のハードディスクに分散して保存.処理速度は上がるが,信頼性は低下する.
    RAID1 同じデータを複数のハードディスクに保存.信頼性が向上する..
    RAID5 データとパリティ情報を複数のハードディスクに分散して保存.1 台のハードディスクが故障してもデータの復元が可能であり,信頼性が向上する.

8-15-42 入出力デバイス

  入出力インタフェースの種類,データ転送方式,デバイスドライバなどについて理解する.

  1. 入出力インタフェース

    コンピュータ本体と,入出力装置,補助記憶装置などの周辺機器とデータのやりとりを行うための規格を入出力インタフェースと呼ぶ.入出力インタフェースには,1 ビットずつ順番にデータを転送するシリアルインタフェースと,複数の線を使用して,8 ビットや 16 ビットのデータを同時に転送するパラレルインタフェースが存在する.

    分類 種類 特徴
    シリアルインタフェース 有線 USB( Univarsal Serial Bus) キーボード,マウス,プリンタなど多種類の周辺機器を,USB ハブを介して最大 127 台まで接続可能であり,パソコンにおける最も標準的なインタフェースである.また,バスパワー形式の周辺機器であれば,電源も供給できる.ただし,消費電力は小さい必要がある.
    IEEE1394 ディジタルカメラ,DVD,ハードディスクなどを,デイジーチェーン接続(数珠つなぎ)によって最大 17 台,リピータハブを介して最大 63 台まで接続可能であり,通信速度は速い.
    RS-232C モデム,マウスなどを接続でき,通信速度は遅い.
    シリアル ATA 内蔵のハードディスクや CD を接続する パラレルインタフェース IDE をシリアル化した規格である.
    パラレルインタフェース 有線 セントロニクス プリンタ,プロッタなどを接続でき,通信速度は遅い.
    SCSI ハードディスク,CD,磁気テープなどを最大 7 台まで接続でき,通信速度は速い.
    IDE/EIDE 内蔵のハードディスクや CD を最大 2 台接続でき,通信速度は速い.EIDE は,IDE の拡張で,最大 4 台までの機器を接続できる.
    GP-IB 計測機器などを接続でき,中程度の通信速度である.
    PCMCIA パソコンに接続する IC カードの仕様を策定するための米国の業界団体名
    無線 IrDA 赤外線により無線通信を行うための規格であり,パソコン,携帯情報端末( PDA )などで使用されている.
    BlueTooth パソコン,携帯情報端末( PDA )などで使用されている無線通信規格である.IrDA とは異なり,10 m 以内であれば,間に障害物があっても利用できる.

  2. デバイスドライバ

    一般に,パソコンと周辺機器をハード的に接続しただけでは,その周辺機器を利用できない.データのやりとりなど周辺機器を制御するソフトウェア,デバイスドライバが必要である.OS に含まれているものも存在するが,一般的には,周辺機器に付属している,周辺機器使用に先立ってパソコンにインストールしてやる必要がある.

      通常,周辺機器は,パソコンを起動する前に接続し,電源を入れておく必要がある.逆に,周辺機器を取り外すためには,パソコンの電源を切ってから行う必要がある.しかし,USB,及び,IEEE1394 には以下の機能がある.

    1. ホットプラグイン: 電源を入れたまま,周辺機器の着脱が可能な機能

    2. プラグアンドプレイ: 周辺機器を差し込むと,OS がその周辺機器を自動的に判断し,利用可能な状態にしてくれる機能

8-16 中分類16:システム構成要素

8-16-43 システムの構成

  代表的な処理形態,システム構成,及び,利用形態の特徴を理解する.

  1. 処理形態

    コンピュータによる業務の処理形態は,集中処理と分散処理に分類される.集中処理は,1 台のホストコンピュータですべての業務を行う処理形態である.一般に,複数の人が同時に利用できるように,ホストコンピュータには複数の端末が準備されている.セキュリティ対策,運用管理などは容易であるが,ホストコンピュータが故障した場合はすべての業務が停止することになる.また,業務の拡大などに対する対応も困難である.

    分散処理は,業務を複数のコンピュータ(通常,接続されている)に分散して処理させる方法である.故障や業務の拡大等に対する対応は比較的容易であるが,セキュリティ対策,運用管理などが複雑になる.

    並列処理とは,複数のコンピュータ,または,複数の CPU を持ったコンピュータによって,同時・並列的に業務を実行することをいう.例えば,業務を n 台のコンピュータで同時に実行することによって,1 台で実行する場合の n 分の 1 の時間で実行することが可能になる(実際は,オーバーヘッドのためもう少し時間がかかる).なお,ネットワーク上にある複数のコンピュータに処理を分散し,それらが一つのコンピュータシステムであるかのようにしてサービスを提供する方式を,グリッドコンピューティングという.

    また,クラスタシステムも似たような概念であり,信頼性や処理性能を高めるために利用される.複数のコンピュータを連携させ,全体を 1 台の高性能のコンピュータであるかのように利用する.連携しているコンピュータのどれかに障害が発生した場合には,ほかのコンピュータに処理を肩代わりさせることで,システム全体として処理を停止させないようにする.

  2. 信頼性向上を目的としたシステム構成

    デュプレックスシステムでは,2 組のシステムを用意し,1 組は稼働状態,他の 1 組は待機状態にしておく.もし,稼働状態のシステムが故障した場合は,待機状態のシステムを稼働させることになる.待機方法には,ホットスタンバイコールドスタンバイという 2 つの方式がある.ホットスタンバイ方式では,待機システムにおいても前もって稼働システムと同じプログラムを動作させておき,稼働システムに故障が起こったとき即座に切り替える方式である.また,コールドスタンバイ方式では,稼働システムに故障が起こってから,待機システムに稼働システムが実行していたプログラムを起動して切り替える方式である.

    デュアルシステムでは,2 つのシステムに全く同じ処理を同時に実行させ,それらの結果を照合し,結果の正しさを確認しながら処理を進める.結果に対する信頼度を高めたいときに使用される.

    システムが稼働しなくなった場合に備え,プログラムやデータに対するバックアップを整備しておく必要がある.一般に,稼働しているシステムから距離的に離れた場所に,バックアップサイトを準備しておく.その方法の違いにより,ホットサイト,ウォームサイト,コールドサイトなどがある.ホットサイトは,デュプレックスシステムのホットスタンバイ方式のように,システムと同じ業務を実行しながら,ネットワークを介して常時プログラムやデータの更新を行い,システムに障害があったとき即座に切り替え,業務を続行するサイトである.ウォームサイトは,プログラムやデータを常時更新しておき,システムに障害があったときは,それらのデータ等を使用してシステムを復元し,業務を続行するサイトである.また,コールドサイトは,システムの障害時に,システムを稼働する場所を確保したサイトである.

  3. サーバ形状

    1. ブレード型サーバは,1 枚の薄く平たい基板上に CPU やメモリーなどを集積して配置し,この基板(ブレード)を筐体のスロットに差し込んで使用するサーバシステムである.サーバの形状が薄くて細長く,刃(ブレード)の形に似ていることから,この名称で呼ばれている.ブレード型サーバでは,電源装置やファン,外部インタフェースなどをサーバ(ブレード)間で共有することによって,高密度化,省スペース化を実現している.

    2. タワー型サーバは,コンピュータの筐体が縦に長く,塔(タワー)が立っているような外観のサーバーである.フルタワー型,ミドルタワー型,ミニタワー型などの種類があり,特にフルタワー型は容積にゆとりがあるので拡張性が高く,高性能なサーバに多く採用されている.

    3. デスクトップ型サーバは,机上(デスクトップ)に据え置くタイプのサーバーである.

    4. ラックマウント型サーバは,決められた大きさの棚(ラック)に平積みできる,平たい形状のサーバーである.棚( rack )に載せる( mount )ので,ラックマウント型と呼ばれる.棚を縦に何段も積み上げることができるので省スペース化を図ることが可能である.市販されている多くの製品では EIA(米国電子工業会)が規格化した 19 インチ幅のラックを採用している.

  4. 利用形態

    与えられたデータ等に基づき,ある業務を適当な日時に一括して処理する方式をバッチ処理という.例えば,すぐ結果を必要とせず,かつ,処理時間が長いような業務は,バッチ処理が可能である.この方式とは異なり,データが入力されるなど,何らかの状況変化が生じたときに,その変化とほぼ同時に処理を開始し,かつ,許容時間の範囲内に処理を終了するような方式をリアルタイム処理という.たとえば,コンピュータによって,自動車,ロボットなどの機械を制御するような場合は,リアルタイム処理が必要である.コンピューターとユーザ間で会話をするように,ユーザとコンピュータが応答を繰り返しながら処理を進めていく対話型処理においても,ほぼリアルタイム処理に近い処理が行われているが,厳密な意味におけるリアルタイム処理ではない.なぜなら,ユーザの入力に対する応答が多少遅れても(許容時間の範囲内に処理が終了しなくても),大きな問題にならないからである.

  5. クライアントサーバシステム

      分散処理の一形態として,ピアツーピア型システム,クライアントサーバシステムなどが存在する.ピアツーピア型システムは,対等の役割を持つコンピュータがネットワークでつながれたシステムであり,一般に,小規模なシステムとして使用される.これとは異なり,プリンタやデータベースなどを管理し,サービスを提供するサーバと,サービスを受けるクライアントという 2 種類のコンピュータから構成されるネットワークシステムをクライアントサーバシステムという.サーバの種類としては,例えば,以下のようなものがある.

    1. ファイルサーバ: 文書,データなどのファイルを共有するためのサーバ

    2. プリントサーバ: プリンタを共有するためのサーバ

    3. データベースサーバ: データベースを管理するためのサーバ

    4. Web サーバ: Web ページを管理するサーバ

    5. メールサーバ: メールの送受信を管理するサーバ

    クライアントサーバシステムでは,ワープロソフトや表計算ソフトなどのアプリケーションソフトをクライアントに置き,データはファイルサーバやデータベースサーバなどのサーバに置いて運用するのが一般的である.しかし,この方法であると,アプリケーションソフトの変更など,クライアントを管理するのが大変な作業になると共に,データベースサーバの負荷が大きくなる可能性がある.そこで,データベースサーバの処理の一部やアプリケーションソフトの実行を受け持つアプリケーションサーバを,データベースサーバとクライアントの中間に置くシステムも採用されている.このように,データベース層アプリケーション層ファンクション層),プレゼンテーション層(クライアント)の 3 層から成るシステムを 3 層クライアントサーバシステムという.なお,ネットワーク負荷を軽減するため,データベースアクセスを行う際に,利用頻度の高い命令群をあらかじめサーバ上に用意しておく機能(ストアドプロシージャ機能)が利用される場合もある.

    3 層クライアントサーバシステムにおいては,アプリケーションソフトはアプリケーションサーバに存在するため,ソフトウェアの更新を行う場合,アプリケーションサーバに対してだけ行えばよく,管理が容易になる.また,クライアント側には,アプリケーションソフトウェアを表示する機能と操作する機能だけが備わっておればよいことになる.従って,クライアント側にハードディスクを持たないシンクライアントを使用することが可能となり,パソコンの盗難などによる情報漏洩に対する防止策としても有効となる.

    クライアントを集中管理するためには,クライアントのハードウェア,インストールされているソフトウェアなどを監視する必要がある.インベントリ収集は,クライアント管理ツールの機能であり,クライアントのハードウェア情報やインストールソフトウェアの情報をスキャンして収集し,そのリストを作る機能である.

    1 台のサーバで,ウェブサーバ,メールサーバ,DHCP サーバなど,複数のサーバを動かすことをサーバの仮想化技術という.コストや管理が簡単になる反面,障害時のリスクなどが高まるという特徴がある.

8-16-44 システムの評価指標

  システムの性能,信頼性,経済性などの評価に関する考え方を理解する.

  1. システムの性能

    システムの処理能力に対する指標としては,以下に示すようなものが存在する.

    1. スループット: 単位時間あたりの処理量

    2. ターンアラウンドタイム: 入力から出力までの時間

    3. レスポンスタイム応答時間): 処理を開始してから出力を開始するまでの時間

    また,処理性能を比較する方法としては,使用するソフトウェアを使用する環境で実行して評価するベンチマークテストがある.ベンチマークテストとしては,トランザクション(データベース更新時の処理単位)処理に対する性能測定を行う TPC,整数や浮動小数点に対する演算性能を比較する SPEC などがある.

    コンピュータそのものの性能を評価するためには,命令ミックスが使用される.命令ミックスは,頻繁に使用される命令の平均実行時間と使用頻度を表す重みを掛けた加重平均実行時間によって表現される.事務処理用の命令ミックスをコマーシャルミックス,技術計算用の命令ミックスをギブソンミックスと呼ぶ.また,1 秒間に何百万回の命令を実行できるかを表す MIPS,1 秒間に何回の浮動小数点演算を実行できるかを示す FLOPS(技術計算用)なども使用される.

  2. システムの信頼性

      コンピュータシステムの信頼性評価指標RASIS(信頼性,可用性,保守性,保全性,安全性)という.信頼性は,「システムが与えられた条件で規定の期間中,要求された機能を果たすことができる性質」,また,信頼度は,「アイテムが与えられた条件で規定の期間中,要求された機能を果たす確率」と定義される.システムの信頼性(信頼度)は,以下のような項目で評価される.

    1. 故障率: 単位時間内に故障する割合.故障率は,一般に,初期故障期偶発故障期摩耗故障期という 3 つの段階を経て変化し,右図のような形をしている.この曲線を,バスタブ曲線と呼ぶ.

    2. 平均故障時間( MTBF: Mean Time between Failures )平均寿命( MTTF: Mean Time to Failures )): 故障が発生するまでの動作時間の平均であり,修理が可能なものに対しては MTBF,修理が不可能なものに対しては MTTF と呼ばれる.

    3. 平均故障回復時間(平均修理時間,MTTR: Mean Time to Repair): 修理にかかる平均時間

    4. 稼働率: システムがある期間内において運転されている時間の割合であり,「 稼働率 = MTBF / ( MTBF + MTTR ) 」の関係がある.

    複雑なシステムの場合,システムの信頼度(以下,稼働率と考えても良い)は,サブシステムの信頼度から計算される.その際,システムの構造によってその計算方法は異なってくる.直列システムは,サブシステムが直列に接続されることによって構成されているシステムである.したがって,システムが正常に動作するためには,各サブシステムがすべて正常に動作している必要がある.例えば,信頼度が Ri(t),故障率が λi(t) であるサブシステムを n 個直列に接続した場合,システムの信頼度,及び,故障率は以下のようになる.

    信頼度 R(t) = R1(t)・R2(t)・・・Rn(t)
    故障率 λ(t) = λ1(t) + λ2(t) + ・・・ + λn(t)

    並列システムは,サブシステムが並列に接続されることによって構成されているシステムである.したがって,システムが正常に動作するためには,各サブシステムのいずれかが正常に動作していれば良いことになる.先に述べたデュアルシステムは,その一例である.例えば,信頼度が Ri(t) であるサブシステムを n 個並列に接続した場合,システムの信頼度は以下のようになる.

    信頼度 R(t) = 1 - (1 - R1(t))・(1 - R2(t))・・・(1 - Rn(t))

    また,待機システムは,サブシステムのいくつかを使用せず待機させておき,常時使用しているサブシステムが故障したとき,待機させているサブシステムと切り替えるシステムをいう.先に述べたデュプレックスシステムは,その一例である.

      信頼性を高めるためには,ハード面,及びソフト面の両面にわたった信頼性設計が重要となる.構成部品の信頼度を上げて故障が発生しないようにするという考え方をフォールトアポイダンスという.逆に,障害の発生を見越して,例え故障が発生しても,システム全体としての機能を失わないようにする考え方をフォールトトレラントという.フォールトトレラントを実現する方法としては以下に示すようなものがあげられる.

    1. フェイルセーフ: 故障が発生した場合,常に安全な状態に移行するといった考え方である(安全性重視).例として,1)石油ストーブを倒すと消える,2)信号機が故障したら,信号を赤にする,などがある.

    2. フェイルソフト: システムの一部に障害が発生した場合,故障した個所を切り離すなどの操作によって,例え機能を低下させてもシステムの稼動を続けるといった考え方である(継続性重視).例として,1)停電が発生したら,バッテリー電源に切り替える,2)RAIDシステム,などがある.

    3. フールプルーフ: 利用者が操作や手順を間違えても,誤動作が起こらないようにするという考え方である.例として,1)ファイルを削除する場合に,警告メッセージを出す,などがある.

  3. システムの経済性

    ハードウェア及びソフトウェアの導入から運用までを含んだ総コストを TCO( Total Cost of Ownership )という.一般的に,システムのコストは,システム構築時に必要とされる初期コストと,システムの運用に必要とされる運用コストランニングコスト)に分類できる.

8-17 中分類17:ソフトウェア

8-17-45 オペレーティングシステム

  ソフトウェア体系,及び,OS の機能や種類について理解する.

  1. ソフトウェア体系

      コンピュータは,ハードウェアとソフトウェアによって構成されるが,その内,ソフトウェアは以下のように分類される.なお,下の表には記述してないが,制御プログラムの一部として,BIOS というソフトウェアが存在する.BIOS は,ハードウェアの動作を制御する最も基本的なソフトウェアであり,パソコンでは,ROM に記憶されている.電源投入時には,まず,BIOS が立ち上がり,メインメモリの記憶内容のクリア,周辺機器の接続チェック,OS の立ち上げなどを行うため, BIOS が正しく動作しないとコンピュータを起動できなくなる.

    分類1 分類2 機能
    基本ソフトウェア(広義の OS制御プログラム(狭義の OSコンピュータが持つハードウェアやソフトウェア資源の管理と,それを効率的に運用するための制御を行うソフトウェア
    サービスプログラムユーティリティOS に対する補助的な機能を提供するソフトウェアであり,ローダ,ファイルの圧縮・解凍を行うソフト,ディスクのバックアップを行うソフトなどが含まれる.
    言語プロセッサ コンパイラなど,言語の翻訳処理を行うソフトウェア
    ミドルウェア 基本ソフトウェアと応用ソフトウェアの中間に位置し,データベンス管理ソフト,ソフトウェア開発支援ソフトなど,多くの応用分野で共通して使用できるソフトウェア
    応用ソフトウェアアプリケーションソフトウェア共通応用ソフトウェア 表計算ソフト,ワープロソフトなど,各業務で共通して利用できるソフトウェア
    個別応用ソフトウェア 給与計算ソフト,販売管理ソフトなど,特定の業務を対象として開発されたソフトウェア

  2. 制御プログラム(狭義の OS )の機能

    1. プロセス管理タスク管理): コンピュータ内で行われる仕事の単位をプロセス(タスク)という.MS-DOS のような古い OS では,一人のユーザ(シングルユーザ)が,一度に 1 つのプロセスしか実行できなかった(シングルタスク).しかし,最近の多くの OS では,複数のユーザ(マルチユーザ)が,一度に複数のプロセスを実行させることができる(マルチタスク).プロセス管理は複数のプロセスを実行するために OS が行う処理である.CPU を 1 つだけ持つ一般的なコンピュータでは,実行するプロセスを高速に切り替えていくことによってマルチタスク処理を実現している.また,プロセスごとに優先度を与え,切り替える時間を変えている(各プロセスに割り当てられる実行時間が異なってくる).

    2. メモリ管理: コンピュータ内のメモリには,最も高速なレジスタから,キャッシュメモリ,一般的なメインメモリ,ディスクキャッシュ,ディスク装置などがある.メモリ管理の任務は,メモリの割り当てと解放,キャッシュメモリとその他のメモリ間のスワッピング制御,メインメモリとディスク装置間のスワッピング制御など,多層構造になっているメモリを効率的に制御することである.

    3. ファイル管理: 補助記憶装置に対するファイルの格納,削除,分類などの処理を行う.

    4. 入出力管理: デバイスドライバ等を介して,入出力装置の作動やデータ転送を管理する.

    5. ネットワーク管理: TCP/IP などの通信プロトコルに従って,通信を管理する.

    6. セキュリティ管理: セキュリティ管理の内,OS が行うべきことはユーザ管理である.つまり,ユーザがコンピュータを利用しようとした場合,正当なユーザであるか否かをユーザアカウントユーザ ID(ユーザ名)パスワード)で確認(ユーザ認証)し,正当なユーザであればそのユーザのアクセス権を決定し,ユーザがアクセスできる範囲を制限することである.

    7. ユーザインタフェース管理: パソコンを操作する人にとって使いやすい環境,例えば,グラフィカルユーザインタフェース( GUI:Graphical User Interface )を提供・管理する. .

  3. OS の種類

      初期においては,MS-DOS のように,シングルユーザ・シングルタスクの OS も存在したが,現在では,ほとんどの OS が,マルチユーザ(複数のユーザが同時に利用可能),マルチタスク(複数のタスクを同時に実行可能)機能を持っている.

    1. Windows: パソコン用の最も一般的な OS

    2. Mac-OS: アップルのパソコン用 OS

    3. UNIX: ミニコンピュータやワークステーション用の OS として広く採用され,さらに,メインフレーム,スーパーコンピュータなどにも用いられている.

    4. Linux: UNIX と似た OS であり,パソコンに限らず,携帯電話のような組み込みシステム,メインフレーム,スーパーコンピュータまで,幅広く採用されている.

8-17-46 ファイルシステム

  ファイル管理の基本的な仕組みとファイルへのアクセス方法,及び,バックアップの基本を理解する.

  1. ファイルとデータ形式

    ファイルとは,コンピュータで扱うデータの集合であり,たとえば,一つの文書,プログラム,画像,データなどがこれに相当する.各ファイルには,それらを識別する固有の名前が付けられる.名前の付け方は任意であるが,一般に,以下のような形式を採用する場合が多い.

    aaaaaa.xxx

    ここで,「 aaaaaa 」の部分は任意であり,OS によっては,日本語も使用できる(この例のように,6 文字と制限されているわけではない).ピリオドの後の「 xxx 」の部分は,拡張子と呼ばれ,1 ~ 4 文字によって,ファイルの種類を表すために使用される.例えば,代表的な拡張子としては,以下に示すようなものが存在する.

    拡張子 意味
    txt 文字と改行だけからなるテキストファイル
    csv 文字や数値データをカンマで区切って保存したファイル
    exe 実行可能ファイル
    pdf PDF ファイル
    htmhtml ブラウザで表示可能な Web ページ
    doc Word によって作成した文書ファイル
    xls Excel によって作成したファイル
    ppt PowerPoint で作成したファイル
    wav,wave,mp3 音声や音楽データ(詳細は,マルチメディア技術参照)
    bmp,gif,jpg,jpeg 画像データ(詳細は,マルチメディア技術参照)

  2. ファイル管理

    一般に,ファイルは,目的によっていくつかのグループに分け,上図に示すような階層的な構造を持たせて保存される.上図において,四角で囲まれたものは,ディレクトリと呼ばれ,ファイルや他のディレクトリを入れる箱のようなものである( Windows では,フォルダと呼ばれる).

    上図において,最も上にあるディレクトリ(「 / 」)をルートディレクトリと呼ぶ( Windows では,「 \ 」で示される).また,test,program などのように,他のディレクトリに含まれるディレクトリをサブディレクトリと呼ぶ.上図は,「ルートディレクトリに,ファイル file1,faile2,及び,サブディレクトリ c_program が含まれ,サブディレクトリ c_program には,サブディレクトリ program と data が含まれ,・・・」を表現している.

    保存されているファイルを指定する方法として,絶対パス指定相対パス指定という 2 つの方法がある.絶対パス指定は,ルートディレクトリから目的とするファイルまでの経路を指定する方法であり,例えば,先の図において file4 を指定する場合は,以下のようになる.この例から明らかなように,ディレクトリ名間の区切り記号として「 / 」( Windows の場合は「 \ 」)を使用する.

    /c_program/probram/file4
    \c_program\probram\file4 ( Windows の場合.以下同様)

    相対パス指定では,カレントディレクトリ(現在のディレクトリという意味であり,例えば,現在実行しているプログラムが存在するディレクトリなどに相当する)からの相対的な経路で指定する.以下,カレントディレクトリが,「 /test 」であるものとして説明する.まず,カレントディレクトリにあるファイル(この場合は,file3 )を指定するには,単に,

    file3

    と指定すればよい(ディレクトリも同じ).また,カレントディレクトリを示す記号「 . 」を使用して,

    ./file3

    のようにも記述できる.また,先に述べた file4 を指定するには,

    ../probram/file3

    と記述することになる.ここで,「 .. 」は,一つ上の親ディレクトリを指す記号である.

    複数のファイルを同時に指定したいときは,以下に示すようなワイルドカードを使用できる.

    1. ワイルドカード「 ? 」: 任意の1文字があてはまる
      例:test?t.cpp → test1t.cpp,test2t.cpp,testat.cpp などが該当

    2. ワイルドカード「 * 」: 任意の文字列が当てはまる
      例1:* → すべてのファイルが該当
      例2:test.* → test.c,test.cpp,test.exe などが該当

    また,ファイルやディレクトリには,アクセス権を設定することが可能である.アクセス権とは,読むことができる,書き込む(修正する)ことができる,実行することができる(もちろん,実行できないファイルやディレクトリに対しては,この権利はない)という 3 種類の権利である.一般に,自分の保有するファイルやディレクトリに対してはすべての権利があるが,他人の保有するファイルやディレクトリに対しては,すべての権利がないのが普通である.ファイルを共有するような場合は,その目的に従って,ファイル所有者が特定の権利を他人にも与える必要がある.

  3. バックアップ

    保存されたファイル等は,記憶媒体の故障などによって,その内容が失われることも少なくない.そのために,それらのコピーを別の記憶媒体に保存しておく,つまり,バックアップをとっておく必要がある.バックアップの方法としては,すべてのデータを対象としたフルバックアップ,フルバックアップ以降に変更されたデータだけを対象とする差分バックアップ,前回のバックアップ以降に変更されたデータだけを対象とする増分バックアップなどがある.

8-17-47 開発ツール

  主要なソフトウェアパッケージの特徴とその使用方法の基本を理解する.

  1. ソフトウェアパッケージの種類

    1. ワープロソフト: 文書を作成するためのソフト(マイクロソフトの Word など)

    2. 表計算ソフト: 複数のデータからなる表を作成し,その集計,検索,グラフ化などを行うソフト(マイクロソフトの Excel など)

    3. データベースソフト: 大量のデータを管理し,データの追加,削除,修正,検索などを行うソフト(マイクロソフトの Access,オラクルの Oracle,オープンソースソフトウェアとして MySQL,PostgreSQL など)

    4. プレゼンテーションソフト: プレゼンテーション用の資料の作成やプレゼンテーションの実施を行うソフト(マイクロソフトの PowerPoint など)

    5. WWW ブラウザ: Web ページを閲覧するためのソフト

  2. ワープロソフト

    ワープロソフトは,文書を作成するためのソフトウェアである.ワープロソフトと似たソフトとして,Windows におけるメモ帳のようなエディタが存在するが,エディタは単に文字だけからなるデータ(テキストファイルとして保存される)を作成できるだけである.しかし,ワープロソフトは,フォントの変更,文字飾り(イタリック,下線,フォント色など),図の挿入,表の作成,ヘッダ・フッタの挿入,印刷など,一般の書籍と遜色ない文章を作成可能である.

    代表的なソフトとして,マイクロソフトの Word,ジャストシステムの「一太郎」などが存在する.これらのソフトで作成された文書ファイルは,それぞれ,拡張子「 docx 」,及び,「 jtd 」を付加して保存される.

  3. 表計算ソフト

      表計算ソフトは,行と列からなる二次元の表に数値などを入力し,それらのデータから計算を行ったり,グラフとして表示したりするためのソフトである.表のことをワークシート,行と列で指定された表の一ますをセルとよぶ.代表的な表計算ソフトとして,マイクロソフトの Excel があり,作成された結果は,拡張子「 xlsx 」を付けて保存される.なお,データをカンマで区切った CSV 形式という形でも保存可能であり,その場合の拡張子は「 csv 」となる.以下に,表計算ソフトの基本的機能を示す.

    1. 相対参照と絶対参照

      一般に,表計算ソフトにおいて,行は 1,2,3,・・・,列は A,B,C,・・・ のように表現され,セルの位置は列と行によって B12 のように指定される(図参照).この指定方法を,相対参照と呼ぶ.セルに対しては,文字や数値だけでなく,式や関数(後述)も入力することが可能である.下の左図は,セル B2 と C2 の和をセル D2 に式の形で入力し,セル B2 から セル B4 までの和をセル B5 に関数を利用して入力した例である.このように入力すると,表示結果はその右の図のようになる.

      表計算ソフトにおいても,セルに対するカット&ペーストが可能である.例えば,上図において,セル D2 をセル D3 と D4,セル B5 を C5 と D5 にコピーすると,各セルの内容は下の左図のようになり,その表示結果はその右図のようになる.文字や数値はそのままコピーされるが,この例から明らかなように,式や関数をコピーすると,式や関数がそのままコピーされるわけではない.コピーされた位置によって,式や関数内のセルが適切に修正されてコピーされる.

      しかし,このような修正が行われると都合の悪い場合がある.例えば,下の図は,セル E2 に,部品A の価格の全体に対する割合を式の形で入力した場合における,セル E2 の内容とその表示結果である.

      この例に対して,先ほどと同様に,セル E2 をセル E3 と E4 にコピーすると,各セルの内容は下の左図のように,また,その表示結果はその右図のようになる.この例のように,セル E3 及び E4 においてもセル D5 の値で割るべきであるのに,それぞれ,セル D6 及び D7 で割るように修正されてしまっている.

      このような問題を防ぐために,絶対参照というセル指定の方法がある.絶対参照では,コピーなどによって修正して欲しくない列や行の前に「 $ 」文字を付加してセルを指定する.そのようにすると,式や関数のコピーによって,指定された行やセルが修正されることがなくなる.例えば,上記の例に対しては,セル E2 に下の左図に示すような形で式を表現した後,セル E2 をセル E3 と E4 にコピーすれば,すべての計算が正しく実行され,その表示結果も右図のようになる.

    2. 関数 以下に関数の例をいくつか示す.

      • SUM 関数(合計関数): 合計の計算
        SUM(合計を求める範囲)  例:SUM(A1:A10) セル A1 ~ A10 の和

      • AVERAGE 関数(平均関数): 平均の計算
        AVERAGE(平均を求める範囲)  例:AVERAGE(A1:A10) セル A1 ~ A10 の平均

      • IF 関数
        IF(論理式,論理式が真の時の処理,論理式が負の時の処理)  例:下図

  4. プレゼンテーションソフト

      プレゼンテーションソフトは,プレゼンテーション用の資料を作成したり,プレゼンテーションを実行するためのソフトである.ワープロソフトとその機能は似ているが,プレゼンテーションを効果的に行うために,文字の大きさ・配置,背景などの設定が容易になっている.また,Web ページへのリンク,動画の取り込みなども可能である.代表的なプレゼンテーションソフトとして,マイクロソフトの PowerPoint があり,作成された結果は,拡張子「 ppt 」を付けて保存される.

  5. WWW ブラウザ

      Web ブラウザ,単に,ブラウザとも呼ばれる.インターネット上のホームページの閲覧・検索を行うためのソフトである.最近では,単なる閲覧ソフトから,ネットワーク資源を活用するためのクライアントソフトとしての役割が強くなっている.何種類かのソフトが存在するが,同じページであっても,その表示結果が異なるという問題がしばしば発生する.マイクロソフトのInternet Explorer,Google 社 Chrome,Mozilla Foundation の Mozilla Firefox,Opera Software 社の Opera などが存在する.

8-17-48 オープンソースソフトウェア

オープンソースソフトウェア( OSS:Open Source Software )とは,

    1. ソースコードの公開
    2. 再配布の制限の禁止
    3. 無保証の原則

という 3 つの特徴を持ったソフトウェアである.様々な分野の様々なソフトが存在するが,その一例を以下に示す.

分野 ソフト 説明
OS Linux UNIX に似た OS
インターネット Firefox ブラウザ
Apache HTTP Server Web サーバー・ソフト
XOOPS Web サイトの構築・管理
オフィスソフト OpenOffice.org マイクロソフトの Office と互換性があるソフト
日本語環境 Canna かな漢字変換ソフト
開発環境 Eclipse 統合開発環境
データベース MySQL 処理速度重視の本格的なリレーショナル・データベース管理システム
PostgreSQL 本格的なリレーショナル・データベース管理システム
教育・学習 Celestia 3 次元天体シミュレーション

8-18 中分類18:ハードウェア

8-18-49 ハードウェア(コンピュータ・入出力装置)

  代表的なコンピュータ,及び,入出力装置の種類と特徴を理解する

  1. コンピュータ

    1. スーパコンピュータ: 大規模な科学技術計算を高速に実行するためのコンピュータ

    2. メインフレーム: 複数の端末を持ち,多種類の業務を集中的に行う多目的コンピュータ(汎用コンピュータ

    3. ワークステーション: 設計やソフト開発などに使用され,パソコンより高い機能を持った個人用コンピュータ

    4. パソコン(パーソナルコンピュータ): 個人用途の幅広い機能を持ったコンピュータ

    5. 携帯情報端末( PDA:Personal Digital Assistant ): 手帳サイズで,持ち運びが容易な個人用パソコン

    6. マイクロコンピュータ(マイコン): 様々な機器に組み込んで使用される制御用コンピュータ

  2. 入力装置

    1. キーボード: キーを利用して,数値や文字を入力

    2. マウス: テーブル上でマウスを動かし,その位置情報を入力する.また,ボタンをクリックすることによって,オン/オフ情報も入力可能である.

    3. トラックボール: 半球状のボールを指で回転させることによって,位置情報を入力する.

    4. ジョイスティック: レバーを上下左右に動かすことによって,方向情報等を入力する.

    5. タッチパネル: 画面上の特定の位置を指で触れることによって入力する.

    6. スキャナ(イメージスキャナ): 文字や写真を画像として取り込む.

    7. 光学文字読み取り装置( OCR:Opticat Character Reader ): 文字を画像として読み込み,それを文字コードに変換する.

    8. 光学マーク読み取り装置( OMR:Optical Mark Reader ): マークシートの読み込み

    9. タブレット: 板とペンで構成され,板の上でペンを動かすと,その刻々の位置がコンピュータに取り込まれる.画像などを入力する際に利用される.

    10. ディジタイザ: タブレットを高精度にした機器

    11. バーコードリーダ: バーコード読み取り装置.なお,バーコードには以下に示すような種類がある.

      • JAN コード: 一般の商品などに付けられたバーコード.JAN は日本の規格であり,米国規格は UPC,ヨーロッパ規格は EAN である.以下に示すように,標準タイプ( 13 桁)と短縮タイプ( 8 桁)が存在する.

        [標準タイプ]

          • 国コード( 2 桁)
          • メーカコード( 5 桁)
          • 商品コード( 5 桁)
          • チェックディジット( 1 桁)

          または

          • 国コード( 2 桁)
          • メーカコード( 7 桁)
          • 商品コード( 3 桁)
          • チェックディジット( 1 桁)

        [短縮タイプ]

          • 国コード( 2 桁)
          • メーカコード( 4 桁)
          • 商品コード( 1 桁)
          • チェックディジット( 1 桁)

      • ITF コード: 段ボールなどに印刷され,物流管理に利用されている

      • ISBN コード: 書籍に付けられた国際的なコード

      • QR コード: 位置検出用パターンを検索して 360 度のどの方向からも読取り可能とした 2 次元バーコード.上に示した 1 次元バーコードより多くの情報を記憶可能である.

  3. 出力装置

    1. ディスプレイ

        ディスプレイに表示される各ドットごとの情報は,グラフィックス用メモリ,つまり,グラフィックスメモリ( VRAM:Video RAM )に記憶されている.各ドットの情報は,R( Red ),G( Green ),及び,B( Blue )に対する強度からなっている.例えば,各色の強度を各々 8 ビットで表現すると,1 ドットの情報を表現するためには 24 ビット必要となり,224 = 16,777,216 色を表現可能になる.なお,ディスプレイの大きさは,対角線の長さをインチで表すことによって表現される.

      [ディスプレイの種類]

        • CRT ディスプレイ: 電子銃から発射した電子ビームを蛍光体に照射して発光させる.大きさや消費電力が大きいが,応答速度は速い.

        • 液晶ディスプレイ: 透過する光を液晶で制御して表示する.消費電力が少なく,薄型にできるが,応答速度はやや遅い.液晶自身に発光能力がないため,バックライトなどが必要である.STNTFT などの方式があるが,最近は,TFT が主流である.

        • プラズマディスプレイ: 放電と蛍光を利用したディスプレイである.薄型にでき,コントラストが高い.

        • 有機 EL ディスプレイ: 電圧をかけると発光する有機体を利用したディスプレイである.自ら発光するのでバックライトがいらず,薄型にでき,消費電力が小さいなどの特徴があるが,現時点で,大きなサイズのディスプレイを製造できない.

      [ディスプレイの解像度]

        • VGA: 640 × 480 ドット
        • SVGA: 800 × 600 ドット
        • XGA: 1,024 × 768 ドット
        • SXGA: 1,280 × 1,024 ドット

    2. プリンタ

        プリンタは,CPU に比較するとその処理速度が遅いため,プリンタがあるジョブで使用されている場合は,他のプリンタを使用するジョブはその処理が終了するまで待たなければならない.そこで,出力データを高速なハードディスクにいったん格納しておき,プリンタが空き次第順番に出力を実行するという方法を採用すれば,プリンタにおける処理が終了するまで待つことなく次の処理に進むことができる.この方法を,スプーリングという.

        プリンタの解像度は,1 インチ当たりのドット数( dpi )で表現される.従って,この値が大きいほど解像度も大きくなる.印字方法などの違いにより,以下に示すような種類のプリンタがある.

      ピンの打刻 印刷単位 プリンタ 説明
      インパクトプリンタ(打刻) シリアルプリンタ ドットインパクトプリンタ 複数のピンの組み合わせによって文字を構成し,そのピンでインクリボンをたたくことによって文字単位で印字する.印字音が高く,解像度が低く,印字速度も遅い.
      ラインプリンタ ラインプリンタ ドットインパクトプリンタと印刷方法は同じであるが,行単位で印刷するため,印字速度は速い.
      ノンインパクトプリンタ(打刻でない) シリアルプリンタ インクジェットプリンタ 印字ヘッドのノズルからインクを吹き付けることによって文字単位で印字する.印字音が低く,解像度も高いが,印字速度は遅い.
      感熱プリンタ 熱を加えると発色する感熱紙を使用して文字単位で印刷する.
      熱転写プリンタ 熱を加えると溶融するリボンを印字ヘッドで溶かしながら,文字単位で印刷する.
      ページプリンタ レーザプリンタ レーザ光と静電気によって,トナーを紙に定着させることによって印字する.ページ単位で印刷するので,印字速度が速い.また,印字音も低く,解像度も高い.

    3. プロッタ

      プロッタとは,処理結果を,2 次元図形の様式で用紙上に描く装置である.
   

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